多角形の利用

多角形を用いた求め方 に書いたように 円に内接・外接する正多角形の周長は $\sin$、$\tan$ を使って表すことができ、 それを利用して円周の長さを挟み込むことで円周率を求めることができる。

しかしながら、三角関数の半角の公式を利用することで計算を簡略化することができる。 また $n=4,6$ では三角関数を使わなくても周長が分かることから それらを総合して公式を作り上げることができる。

三角関数の半角の公式を利用

半径 1 の円に内接する正 $n$ 角形周の長さを $2\pi_n$ とすると

\[ \pi_n = n \sin\frac{\pi}{n} \] \[ \therefore \frac{\pi_n}{n} = \sin\frac{\pi}{n} \]

となる。 この数式は 多角形を用いた求め方 で既に示した通り $n$ が大きくなればなるほど $\pi_n$ は $\pi$ に近くなる。

ここで $\sin$ の倍角の公式を利用すると

\[ \frac{\pi_n}{n} = \sin \frac{\pi}{n} = 2 \sin\frac{\pi}{2n} \cos\frac{\pi}{2n} = 2 \frac{\pi_{2n}}{2n} \cos\frac{\pi}{2n} \]

と元と同じ形を含んだ式になる。 これを再帰的に $k$ 回適用することで

\[ \pi_n = 2^kn \sin\frac{\pi}{2^kn} \prod_{j=1}^k\cos\frac{\pi}{2^jn} \] \[ \therefore \frac{1}{\pi} = \frac{1}{\pi_n} \left( \frac{2^kn}{\pi} \sin\frac{\pi}{2^kn} \right) \prod_{j=1}^k\cos\frac{\pi}{2^jn} \]

を得る。 $k\rightarrow\infty$ のとき、大きな括弧の中は 1 へ収束するので 公式としては

\[ \pi = \frac{n\sin(\pi/n)}{\prod_{j=1}^{\infty}\cos\frac{\pi}{2^jn}} \]

となる。 なお、ここまでの式で三角関数の引数に含まれる $\pi$ は 180° を示す角度であり $\sin$、$\cos$ の値を求めることができれば公式として用いる計算には支障ない。 具体的な例としては

\[ \sin\frac{\pi}{4} = \frac{1}{\sqrt{2}} \Rightarrow \pi = \frac{2\sqrt{2}}{\prod_{j=1}^{\infty}\cos\frac{\pi}{4\cdot2^j}} \] \[ \sin\frac{\pi}{6} = \frac{1}{2} \Rightarrow \pi = \frac{3}{\prod_{j=1}^{\infty}\cos\frac{\pi}{6\cdot2^j}} \]

などが代数的に計算しやすいので計算の初期値として使われることが多い。 さらに、cos の半角公式を利用することで

\[ c_{2k} = \frac{1}{2}\sqrt{1+c_k} \quad ({\rm ここで}\ c_k=\cos(\pi/k)) \]

が成り立つので、これを利用することで上記の 2 式はシンプルに書くことができる。 例えば $\sin(\pi/4) = \cos(\pi/4) = 1/\sqrt{2}$ から Viète の公式

\[ \frac{2}{\pi} = \prod_{j=0}^{\infty} c_{4\cdot2^j} = c_4 \cdot c_8 \cdot c_{16} \cdots = \sqrt{\frac{1}{2}} \sqrt{\frac{1}{2}+\frac{1}{2}\sqrt{\frac{1}{2}}} \sqrt{\frac{1}{2}+\frac{1}{2}\sqrt{\frac{1}{2}+\frac{1}{2}\sqrt{\frac{1}{2}}}} \cdots \]

を導くことができる。