円周率とは?

円周率は元々ユークリッド幾何で定義された円の周の長さを直径の長さで割った値、つまり

\[ \pi = (\text{円周}) \div (\text{直径}) \]

として定義され、その具体的な値は

\[ \pi = 3.1415926535\ 8979323846\ 2643383279\ 5028841971\ 6939937510\ 5820974944\cdots \]

と無限に続く数としてよく知られている。

しかし数学的解析が進んだ今、これとは別の形の定義も与ることができ、 これらのいずれを定義としても構わない。

\[ \pi = 4 \arctan 1 = \arcsin 0 = i \log_e-1 = 4 \int_0^1\frac{1}{1+x^2}dx = 4 \int_0^1\sqrt{1-x^2}dx = (\text{面積}) \div (\text{半径})^2 \]

(ただし,多値関数においては 「正の値のうち最小のもの」という制限で 1 値に定める)

小数点以下何桁目まで知る必要があるか

円周率の具体的な値を 10 進数表記すると上記の通り無限に続くことが知られているが、 実用上の値として円周率を用いる分には小数点以下 4 $\sim$ 5 桁程度を知っていれば十分である.

例えば直径 10cm の茶筒の側面に貼る和紙の長さを求めるとしよう。 この条件下で $\pi=3.14159$ とした場合と $\pi=3.141592$ とした場合とでの違いは $\pm 0.002$mm 程度である。 実際にはそもそも直径の測定が定規を用いての計測となるであろうから その誤差が $\pm 0.1$mm 程度となり、 用いる円周率の桁数が原因で出る誤差より十分に大きい。

また、桁数が必要になるスケールの大きな実例として円形に設計された素粒子加速器を考える. このような施設では直径が 1$\sim$9km という実例がある。 仮にこの直径の測定を mm 単位で正確に行えたとし、小数点以下 7 桁目が違っていたとすると 加速器の長さに出る誤差は 1mm 程度になる.

さらに別の視点として、計算対象の円(のような形状) が数学的な意味での真円からどの程度違うかを考えることも重要である。 例えば屋久島の沿岸の長さを考えた場合、 その長さは $\pi=3$ とした場合も $\pi=3.14$ とした場合とではどちらも正確な長さからは 1km 以上違っているだろう。 とはいえこのような形で円周率を使う場合は必要とする値の概数を知ることが目的であり、 本来の値の 5 倍や 1/10 倍といった「桁違い」の見積もりを出さないことが重要なので 桁数の大小を議論しても意味がない。