大型コンピュータ計算の記録

いわゆる「最初の電子計算機」(定義によって諸説あり) として有名な ENIAC を使用した円周率計算がなされて以降、 コンピュータを利用した計算の時代となった。 この時代は計算機そのものの発達の他、新たな公式やアルゴリズムの発見、 プログラムそのものの改良という形でも記録が伸びていった。

コンピュータでの計算では、古いものは特に、 1 回の計算では正しい値を得られたかどうか確認することができない。 そのため、計算公式、プログラム、 マシンなどを変えて複数回計算することがある。 本リストでは検証計算を行った記録がある場合には一緒に記載する。

現在表示しているデータの参考資料は [JB01] [JB02] [JB09] [JT03] [JM01]。

年代 計算者 使用コンピュータ 宣言桁数
(確認桁数)
[計算桁数]
公式
(検証用公式)
計算時間
(検証時間)
1946 Reitwiesner など[JB09] ENIAC USA 808 Machinの公式
1949 Reitwiesner など ENIAC USA 2,035注1)
[2,040]
Machinの公式
(Machinの公式)
70h
1954 Nicholson、Jeenel NORC USA 3,092
(3,092)
[3,093]
Machinの公式
(Machinの公式)
13m
(13m)
1957 Felton Pegasus USA 7,480
(7,480)
[10,021]
Klingenstiernaの公式
(Gauß の公式)
33h
(33h)
1958 Genuys IBM 704 USA 10,000
(10,000)
[10,000]
Machinの公式
(Machinの公式)
1h40m
(1h40m)
1958 Felton Pegasus USA 10,020
(10,020)
[10,021]
Klingenstiernaの公式
(Gauß の公式)
33h
(33h)
1959 Guilloud IBM 704 USA 16,167
(16,167)
[16,167]
Machinの公式
(Machinの公式)
1h40m
(1h40m)
1961 D.Shanks、Wrench IBM 7090 USA 100,265
(100,265)
[100,265]
Störmerの公式
(Gaußの公式)
8h43m
(4h22m)
1966/2 Guilloud、Fillatre IBM 7030 USA 250,000
(250,000)
[250,000]
Gaußの公式
(Störmerの公式)
41h55m
(24h35m)
1967 Guilloud、Dichampt CDC 6600 USA 500,000
(500,000)
[500,000]
Gaußの公式
(Störmerの公式)
28h10m
(16h35m)
1973/5 Guilloud、Bouyer CDC 7600 USA 1,001,250
(1,001,250)
[1,001,250]
Gaußの公式
(Störmerの公式)
23h18m注2)
(13h40m)
1981 三好、金田 FACOM M-200 日本 2,000,000
(2,000,036)
[2,000,040]
Klingenstiernaの公式
(Machinの公式)
137h18m
(143h18m)
1981-82 Guilloud 2,000,050
(2,000,050)
1982 田村 MELCOM 900II 日本 2,097,144
(2,097,144)
[2,097,152]
Gauß-Legendreの公式
(Gauß-Legendreの公式)
7h14m
(2h21m)
1982 田村、金田 HITAC M-280H 日本 4,194,288
(4,194,288)
[4,194,304]
Gauß-Legendreの公式
(Gauß-Legendreの公式)
2h21m
(6h52m)
1982 田村、金田 HITAC M-280H 日本 8,388,576
(8,388,576)
[8,388,608]
Gauß-Legendreの公式
(Gauß-Legendreの公式)
6h52m
(≧30h)
1982 金田、吉野、田村 HITAC M-280H 日本 16,777,206
(16,777,206)
[16,777,216]
Gauß-Legendreの公式
(Gauß-Legendreの公式)
≧30h
(6h36m)
1983/10 後、金田 HITAC S-810/20 日本 10,000,000
(10,013,395)
[10,013,400]
Gaußの公式
(Gauß-Legendreの公式)
≦24h
(≧30h)
1985/10 Gosper Symbolics 3670 USA 17,526,200
(17,526,200)
[≧17,526,200]
Ramanujanの公式
(Borwein4次の公式)
(28h)
1986/1 Bailey CRAY-2 USA 29,360,000
(29,360,111)
[29,360,128]
Borwein4次の公式
(Borwein2次の公式)
28h
(40h)
1986/9 金田、田村 HITAC S-810/20 日本 33,554,000
(33,554,414)
[33,554,432]
Gauß-Legendreの公式
(Gauß-Legendreの公式)
6h36m
(23h)
1986/10 金田、田村 HITAC S-810/20 日本 67,108,839
(67,108,839)
[67,108,864]
Gauß-Legendreの公式
(Gauß-Legendreの公式)
23h
(35h15m)
1987/1 金田、 田村、 久保、 小林、 花村 NEC SX-2 日本 133,217,700
(134,217,700)
[134,217,728]
Gauß-Legendreの公式
(Borwein4次の方式)
35h15m
(48h2m)
1988/1 金田、田村 HITAC S-820/80 日本 201,326,000
(201,326,551)
[201,326,572]
Gauß-Legendreの公式
(Borwein4次の公式)
5h57m
(7h30m)
1989/5 D.V.Chudnovsky、 G.V.Chudnovsky CRAY-2
IBM-3090/VF
USA 480,000,000 Chudnovskyの公式
(Chudnovskyの公式)
1989/6 D.V.Chudnovsky、 G.V.Chudnovsky IBM 3090 USA ≧535,339,270 Chudnovskyの公式
1989/7 金田、田村 HITAC S-820/80 日本 536,870,000
(536,870,898)
[536,870,912]
Gauß-Legendreの公式
(Borwein4次の公式)
67h13m
(80h39m)
1989/8 D.V.Chudnovsky、 G.V.Chudnovsky IBM 3090 USA 1,011,196,691 Chudnovskyの公式
(Chudnovskyの公式)
1989/11 金田、田村 HITAC S-820/80 日本 1,073,740,000
(1,073,741,799)
[1,073,741,824]
Gauß-Legendreの公式
(Borwein4次の公式)
74h30m
(85h57m)
1991/8 D.V.Chudnovsky、 G.V.Chudnovsky USA 2,260,000,000 Chudnovskyの公式
(Chudnovskyの公式)
1994/5 D.V.Chudnovsky、 G.V.Chudnovsky USA 4,044,000,000 Chudnovskyの公式
(Chudnovskyの公式)
1995/6 高橋、金田 HITAC S-3800/480 日本 3,221,220,000
(3,221,225,466)
[3,221,225,472]
Borwein4次の公式
(Gauß-Legendreの公式)
36h52m28s
(53h43m46s)
1995/8 高橋、金田 HITAC S-3800/480 日本 4,294,960,000
(4,294,967,286)
[4,294,967,296]
Borwein4次の公式
(Gauß-Legendreの公式)
113h41m53s
(130h20m51s)
1995/10 高橋、金田 HITAC S-3800/480 日本 6,442,450,000
(6,442,450,938)
[6,442,450,944]
Borwein4次の公式
(Gauß-Legendreの公式)
116h38m12s
(131h40m24s)
1996/3 D.V.Chudnovsky、 G.V.Chudnovsky USA 8,000,000,000? Chudnovskyの公式
(Chudnovskyの公式)
1997/4 金田、高橋 HITACHI SR2201 日本 17,179,869,142 Gauß-Legendreの公式
(Borwein4次の公式)
5h11m
(5h26m)
1997/7 高橋、金田 HITACHI SR2201 日本 51,539,600,000
(51,539,607,510)
[51,539,607,552]
Borwein4次の公式
(Gauß-Legendreの公式)
29h3m11s注3)
(37h8m16s)
1999/4 高橋、金田 HITACHI SR8000 日本 68,719,470,000
(68,719,476,693)
[68,719,476,736]
Gauß-Legendreの公式
(Borwein4次の公式)
32h54m2s
(39h20m37s)
1999/9 高橋、金田 HITACHI SR8000 日本 206,158,430,000
(206,158,430,163)
[206,158,430,208]
Gauß-Legendreの公式
(Borwein4次の公式)
37h21m4s
(46h7m10s)
2002/11 金田、後、黒田、工藤、 五百木、田中、河村、藤田、篠原、長谷部、安崎、中川
[Ref]
HITACHI SR8000/MPP 日本 1,241,100,000,000注4)
(1,241,177,304,180)
[1,241,177,304,180]
高野喜久雄の公式注5)
Störmerの公式(2)
423h20m
(181h5m)
2009/4 高橋
[Ref]
T2K筑波システム 日本 2,576,980,370,000
(2,576,980,377,524)
[2,576,980,377,600]
Gauß-Legendreの公式
(Borwein4次の公式)
29h5m49s
(44h30m33s)

ここまでの計算は大型コンピュータやスーパーコンピュータと言われる、 研究機関が保有するコンピュータを利用して行われたが、 これ以降は個人所有のコンピュータが活躍することになる。

注1)
資料によると 計算は 2040 桁分行われ、2035 桁と公式発表されたが、後により大きな計算と比較することで 2037 桁までが正しいことが確認された。 近年の資料では2037桁と記録されることが多いが、ここでは当時の公式発表に基づいて 2035 桁とする。
注2)
この当時の計算としては珍しく 2 進数計算(22h11m)の後、 10 進数変換(1h7m)した
注3)
最適化した主計算を 8/1 に再計算し、25h14m32s で完了。 $\sqrt{2}$、$1/\pi$ も同桁数で世界記録
注4)
16 進表記で 1 兆 307 億桁を達成。
注5)
DRM 法を利用。