Ramanujan系公式

元々は Ramanujan が Ramanujan の公式 を発表してから研究され始めた公式である。 Borwein[FB05] の研究から AGM 系と同様の 楕円積分に加え、保型形式と関連させて組み立てられる。[FT01] が、私はこの分野に明るくないので詳細な言及は止めておく。

Ramanujan の公式が出された当時は順番に計算していく $O(n^2)$ の方法しか知られていなかったが、 Binary Splitting 法DRM 法が使われるようになってからは $O(n(\log n)^3)$ 程度の計算量になること、 係数を含めた実計算コストが少なくなることが知られ、 現在知られている中で最速の計算方法となっている。 [JT01][JT03][JM01]

具体例

Ramanujan の公式

\[ \frac{1}{\pi} = \frac{\sqrt{8}}{9801}\sum_{n=0}^{\infty} \frac{(4n)!(1103+26390n)}{(n!)^4 \cdot 396^{4n}} \]

定数の素因数分解は $9801=3^4\cdot11^2$、$396=2^2\cdot3^2\cdot11$、$26390=2\cdot5\cdot7\cdot13\cdot29$ となっている。$\sum$ の 1 項あたり約 8 桁精度が上がる。

Ramanujan の公式 (2)

\[ \frac{1}{\pi} = \frac{1}{3528}\sum_{n=0}^{\infty} \frac{(-1)^n(4n)!(1123+21460n)}{(n!)^4 \cdot 14112^{2n}} \]

こちらは平方根を使わない形の公式である。 定数の素因数分解は $3528=2^3\cdot3^2\cdot7^2$,$14112=2^5\cdot3^2\cdot7^2$, $21460=2^2\cdot5\cdot29\cdot37$

Chudnovsky の公式

\[ \frac{1}{\pi} = \frac{12}{\sqrt{C^3}}\sum_{n=0}^{\infty} \frac{(-1)^n(6n)!(A+Bn)}{(3n)!(n!)^3C^{3n}} \] \[ \begin{eqnarray} A &=& 13591409 &=& 13\cdot1045493\\ B &=& 545140134 &=& 2\cdot3^2\cdot7\cdot11\cdot19\cdot127\cdot163\\ C &=& 640320 &=& 2^6\cdot3\cdot5\cdot23\cdot29 \end{eqnarray} \]

現在知られている最速の計算手段はこの公式に Binary Splitting 法DRM 法を適用する手段である。 $\sum$ の 1 項あたり約 14 桁精度が上がる。

Borwein の公式

\[ \frac{1}{\pi} = \frac{12}{\sqrt{C^3}}\sum_{n=0}^{\infty} \frac{(-1)^n(6n)!(A+Bn)}{(3n)!(n!)^3C^{3n}} \] \[ \begin{eqnarray} A &=& 1657145277365+212175710912\sqrt{61}\\ &=& 5\cdot149\cdot2224356077 + 2^6\cdot11^3\cdot293\cdot8501\sqrt{61}\\ B &=& 107578229802750+13773980892672\sqrt{61}\\ &=& 2\cdot3^2\cdot5^3\cdot7\cdot23\cdot61\cdot71\cdot191\cdot359 + 2^9\cdot3^2\cdot7\cdot11^3\cdot13\cdot23\cdot29\cdot37 \sqrt{61}\\ C &=& 5280(236674+30303\sqrt{61})\\ &=& 2^5\cdot3\cdot5\cdot11( 2\cdot17\cdot6961 + 3^2\cdot7\cdot13\cdot37\sqrt{61}) \end{eqnarray} \]

$A$、$B$、$C$ の値は違うが、基本的には Chudnovsky の公式と同じ形をしている。

式変形

上記の通り、現在最速の公式として知られる Chudnovsky の公式は 出典によって書き方に少しバリエーションが存在する。 しかしながら、全ての公式は結局のところ見かけが違うだけで数式自体は同じである。

\[ \frac{1}{\pi} = \frac{12}{\sqrt{C^3}}\sum_{n=0}^{\infty} \frac{(-1)^n(6n)!(A+Bn)}{(3n)!(n!)^3C^{3n}} = \frac{12}{\sqrt{C^3}}\sum_{n=0}^{\infty} K_n(A+Bn) \] \[ K_n = \frac{(-1)^n(6n)!}{(3n)!(n!)^3C^{3n}} \]

とするとき

\[ \begin{eqnarray} \frac{K_{n+1}}{K_n} &=& \frac{-1\cdot(6n+6)(6n+5)(6n+4)(6n+3)(6n+2)(6n+1)} {(3n+3)(3n+2)(3n+1)(n+1)^3C^3}\\ &=&\frac{-24(6n+5)(2n+1)(6n+1)}{C^3(n+1)^3} \end{eqnarray} \]

となるので、

\[ \begin{eqnarray} \frac{1}{\pi} &=& \frac{12}{\sqrt{C^3}} \sum_{n=0}^{\infty}(A+Bn) \prod_{k=0}^{n-1} \frac{K_{k+1}}{K_k}\\ &=& \frac{12}{\sqrt{C^3}} \sum_{n=0}^{\infty}(A+Bn) \prod_{k=0}^{n-1} \frac{-24(6k+5)(2k+1)(6k+1)}{C^3(k+1)^3}\\ &=& \frac{12}{\sqrt{C^3}} \left(A+\frac{K_1}{K_0} \left(A+B+\frac{K_2}{K_1} \left( \cdots \left(A+nB + \frac{K_{n+1}}{K_n} \left( \cdots \right) \cdots \right. \right. \right. \right) \end{eqnarray} \]

などの形が導かれる。