πが無理数という証明
[FT04] をさらに噛み砕いて日本語訳します.
証明
背理法によって示す.つまり $\pi$ が自然数 $a$,$b$ を使って $\pi = a/b$ と表されると仮定する. さらに,次の多項式を定義する.
\[ f(x) = \frac{x^n(a-bx)^n}{n!} \] \[ F(x) = f(x) - f^{(2)}(x) + f^{(4)}(x) - \cdots + (-1)^nf^{(2n)}(x) \]ここで
\[ n! f(x) = x^n(a-bx)^n \]の $n$ 次以上の項の係数は整数なので, $f(x)$ や導関数 $f^{(i)}(x)$ は $x=0$ で整数値をとる. また,$f(x) \equiv f(a/b - x)$ から,$x=\pi=a/b$ でも整数値を取ることがわかる.
ここで
\[ \frac{d}{dx}\left\{ F'(x) \sin x - F(x)\cos x\right\} = F''(x) \sin x + F(x)\sin x = f(x)\sin x \]より,
\[ \int_0^{\pi} f(x)\sin x dx = \left[F'(x) \sin x - F(x)\cos x \right]_0^{\pi} = F(\pi) + F(0) \tag{1} \]となる.
今,$f^{(i)}(\pi)$ と $f^{(i)}(0)$ が整数であることから, $F(\pi) + F(0)$ は整数である.しかし,$0\lt x\lt \pi$ において
\[ 0 \lt f(x)\sin x \lt \frac{\pi^na^n}{n!} \]であり,この式から,(1)式の積分値は正の数であることが分かる(左の不等号)が, $n$ の値を十分に大きく取れば(1よりも)小さな値で上から抑えることになる(右の不等号).
つまり(1)の等式は矛盾があるということになり,最初の仮定である「$\pi$が有理数である」が否定される.